犬の高齢化問題

   

1990年以降の急激な高齢化

以下のグラフは年代を追って犬猫の死亡年齢の推移を示したものです。
須田沖夫 日獣会誌64 22〜26(2011)

 
これをみると驚くべきことに1980年の犬の平均寿命は2.6歳!この頃はフィラリアや回虫などの感染症により子犬の死亡率が高く、そのため平均もぐっと下がっているようです。
これが1990年になると10歳前後となり、1998年になると14歳に達します。ここ最近ではさらに伸びて平均は約15歳。その背景には予防処置の普及、医療技術の発展、室内飼育の増加、ペットフードの改良などがあります。
 
大好きな愛犬が長生きしてくれるのは嬉しいことですが、これだけ急激な変化だと人の意識がついていかず、思わぬリスクが生じる恐れもあるのです。

犬を飼うタイミングを誤る問題

数十年に渡り、何頭もの愛犬とともに暮らしてきた飼い主さま。ご自分の年齢も考慮して「おそらく10歳前後まで。長くても12〜13年の寿命だろうから、もう一頭迎えても大丈夫」と判断したのに、それがはずれてしまうケースが近ごろ多くみられます。
飼い主さまもお元気なら問題は無いのですが、通常よりも早く老化現象が生じてしまったり、ご病気になった場合、たとえワンちゃんが元気でも通常のお世話でさえ困難になる可能性があります。
ここ最近では20歳近くのワンちゃんもめずらしくなくなってきました。
将来設計を考える際には、ぜひそのことを覚えておいてください。
 
ワンちゃんと過ごす日々は何にも代え難いほど素晴らしいものですし、それを一度知ってしまったらなかなかそのチャンスを手放せないお気持ちはもちろんよくわかります。
例えば、お近くに住むご家族と共同で飼うなど、自分に万が一のことがあっても愛犬が絶対に幸せに暮らせる準備をしておきましょう。

高齢犬に発生しやすい疾患に関連する問題

高齢犬が増加することにより、死亡原因となる疾患も大きく変化しました。若い子では感染症の重篤化や事故による外傷などが多い一方で、高齢の子では心臓病などの循環障害や神経障害、代謝障害など慢性的な疾患が多くなります。
慢性疾患は症状も穏やかで、知らないうちに少しずつ進行する恐ろしさがあります。
高齢犬に多い病気を知らないと、その兆候を見逃してしまい、早期治療のチャンスを失ってしまうことも。
 
また慢性疾患の増加は医療費の増加につながります。
多くの病気はお薬などでコントロールすることが可能ですし、最近では大学病院などで脳外科手術なども行われるようになりました。わが子同然の愛犬の苦しみを取り除いてくれる獣医療の素晴らしさには感謝しかありませんが、それだけ医療費がかかってしまうのは避けられません。治癒が見込めない病気であれば、ずっと継続的にお薬代も必要になります。
疾患傾向が変化したことにより、医療保険など経済的な準備もいま一度考え直さなくてはいけないのかもしれません。

高齢犬介護の問題

犬の高齢化に伴い、介護が必要な子も増えました。
若いうちは問題なくできていたのに排泄の失敗が増えたり、 運動機能の低下により寝たきりになってしまったり、認知症状による夜鳴きや徘徊など、、、多種多様な問題が生じています。
この問題に直面すると誰もが大きく困惑します。
老犬介護に戸惑うのは当然でしょう。ここまで犬が高齢化したことは過去に無く、経験則が一切通用しないのですから。
 
また海外の事例を参考にすることも残念ながら困難です。欧米諸国では人間においても「無理な延命処置はせず、自然な死を受け入れることが、その人の尊厳を守ること」と考えられているため、寝たきりの高齢者が日本に比べて非常に少ないことが知られています。
犬に関してもそれは同じで、介護が必要になった場合には安楽死を選択することが飼い主の責任だと考えられているそうです。
 
残念ながら高齢犬介護の現場においてさえ、まだまだ方法論は確立されていない部分が多々あります。高齢化に伴って生じる問題行動は多岐に渡り、その子の生活パターンや性格も十分に考慮しながら、最善策を模索していくしかないのです。
 
だからこそ、一人で抱え込むのは禁物です。
この難局を乗り切るには、絶対にサポートが必要です。
まずはご家族の中でしっかりと話し合い、役割分担を決めましょう。
 動物病院の先生やスタッフさん、行きつけのペットサロンなど動物関連のお仕事をしている方に相談するのもよいでしょう。
犬仲間であれば、専門的な知識が無くても、愛犬を大切にしたいという気持ちに共感して心を支えてくれるでしょう。
先に述べたように、まだまだ犬の高齢化に伴う問題を実感していない方も多いため、求めても十分な答えが得られないこともあるかもしれませんが、そんな時にはインターネットを活用してください。ありがたいことに数多くの飼い主さまがご自分の経験や工夫をブログやSNSで発信してくださっています。このサイトでも介護を無理なく続けるための情報をご提供していきますので、ぜひ活用してくださいね。